刊行

都市計画312号
人間中心のみち空間へ ~デザインとマネジメントの新展開~

 モータリゼーションの時代に人を脇へ脇へと追いやってきたみちづくりは,成熟社会・少子高齢社会の到来とともに質的に豊かな空間の創出が求められるようになり,また自動車交通需要に頭打ちの傾向が現れてきた昨今,確実に転換点を迎えた。とりわけ,そこを歩く人,そこに佇む人の多様な活動を受け入れ創発させる空間として,みち空間を捉え直すことが要請されていよう。

 こうした動きは制度的にも政策的にも広がりつつある。例えば2011年10月の都市再生特別措置法改正で認められた「にぎわい・交流の創出のための道路占用許可の特例」は,道路上にオープンカフェなどを常設することを可能にし,各地に適用事例が登場している。同改正で創設された「都市利便増進協定」制度は,街並みの整備と維持・管理に地域が主体的に関与する道を開いた。また,大阪では大阪都市魅力創造戦略の一環としての「御堂筋フェスティバルモール化」,東京では環状2号線・新虎通りなどを舞台とする「東京シャンゼリゼプロジェクト」や丸の内仲通りなどの「365日24時間歩行者天国」化といった,道路空間の再配分や歩道空間の活用に関し注目に値する構想が提唱されてきている。

 本特集ではこうした“人間中心のみち”へ向けた空間のつくり方・使い方の変革をテーマに,まちづくり・都市デザイン・交通計画の観点を複合的に踏まえ,近年の事例からその到達点を理解し,課題を展望することを主眼としている。併せて,歩行者空間の計画・設計に資する手法論の新たな展開についても取り上げる。

(編集担当:髙見 淳史)

目次

地図の中の風景

米国ポートランド都市圏のTOD(公共交通指向型)開発 ―MAXオレンコ駅周辺
 太田 勝敏


私が出会ったまち

サイクルタウン「ハウテン」
 新田 保次


特集:人間中心のみち空間へ ~デザインとマネジメントの新展開~

【総論】

2000 年以降に整備/再整備実施もしくは計画された歩行者空間の事例
 三浦 詩乃

歩道空間のアクティビティ ―小さな柔らかいデザインが交流の場所をつくる―
 北原 理雄

人間中心のみちづくりの展開:課題と期待 ―交通計画の視点から
 久保田 尚

歩行者空間の変遷史 ―基盤整備からまちづくりへの発展過程―
 三浦 詩乃

【みち空間をつくり変える】

ニューヨーク市における道路空間の広場化
 中島 直人

「歩いて楽しいまちづくり」に向けた善光寺表参道の空間整備
 柳沢 吉保

鳥取駅前太平線再生プロジェクト ~道路上のまちなか広場からエリアマネジメントへ
 大島 英司

札幌都心部における人のための公共空間の計画と整備
 星 卓志

【みち空間の活用と管理の変革】

札幌大通のまちづくり ~「大通すわろうテラス」の取組~
 服部 彰治

世界都市・東京が目指す質の高い歩行者空間 ~エリアマネジメントによる歩行者中心の環境創出~
 佐野 克彦

東京:新宿モア四番街
 中野 恒明

名古屋:都心まちづくりと道路空間
 井澤 知旦

梅田地区エリアマネジメント組織における公共空間の活用と管理 ―公共空間の利活用がまちの価値を高める―
 植松 宏之

柏の葉キャンパス駅西口地区 ―市と地域の協定に基づく道路管理の枠組み
 三牧 浩也

【歩行者空間の計画・設計に資する手法論】

Link and Placeの概念とイングランドにおける都市街路の計画・設計への適用
 ピーター・ジョーンズ

まちなかでの回遊行動を測る ―調査と分析方法のフレームワーク
 溝上 章志

都市の陣営、その流動の理論と観測
 羽藤 英二

【編集後記】
 髙見 淳史


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