刊行

都市計画340号
健康なまち,健康になれるまち

 少子高齢化は,我が国の社会・経済活動に多大な影響を与え,変革を迫る喫緊の課題となっている。国民が健康な生活を営むことは,本人の生活の質向上だけでなく,医療費の削減という国家レベルの問題をも左右している。生活習慣に伴う健康問題は,青年期,中年期の生活習慣から形成されたものであり,高齢者のみならず全ての世代に共通した社会問題である。

 本特集では,「健康なまち」とは何か,「健康になれるまち」とはどのようなまちかを探ることにより,「健康」と「都市」の関係性を様々な角度から俯瞰することを試みる。

  第一部では,「健康とは何か」について,医学,健理学と国土計画学の観点から哲学や歴史を交えて語っていただく。第二部では,「まちと健康のエビデンス」について,ヒトの健康,マチの健康,という切り口から質的・量的データを元に語っていただく。第三部では,「まちと健康のための施策」を医療福祉分野と都市計画分野の事例を交えて紹介する。第四部では,医療・福祉分野と都市計画分野の連携可能性について,有識者に議論いただく。

 本特集が「健康なまち」づくり,「健康になれるまち」づくりを考える一助となれば幸いである。

(編集担当:谷口 綾子・樋野 公宏)

目次

地図の中の風景

折りたたみ地図
 谷口 顕一郎


支部トピックス


特集:健康なまち,健康になれるまち

【健康とは何か?】

新しい健康を考える ―WHOが提案した健康概念を踏まえて
 星 旦二

都市政策において都市と個人の「健康」を想定する科学的・実践的意義
 藤井 聡

【まちと健康のエビデンス】

ヒトの健康

交通外傷の実態と対策 ―健康問題としての交通外傷と健康を支える安全な環境
 中原 慎二

大気汚染による健康影響 ―疫学的エビデンスはこのようにつくられてきた
 市川 政雄

交通分野における健康便益評価手法の進展
 室町 泰徳

我が国の身体活動と運動習慣の現状と変化 ―身体活動奨励の意義と方策
 宮地 元彦

身体活動の活発化からアプローチする糖尿病予防 ―糖尿病患者の身体活動実態調査と市民対象の健康教育イベントの実施結果より
 白水 眞理子

マチの健康

身体活動を促す都市環境
 樋野 公宏

都市計画分野 vs. 公衆衛生分野 ―「健康まちづくり」の評価指標群を切り口として
 崔 文竹

都市部における食料品アクセス問題の現状と将来
 高橋 克也

「おでかけ」したくなる健康なまちを支える公共交通づくり
 加藤 博和

都市空間における格差と健康 ―「まち」の健康格差の地理学
 中谷 友樹

生活習慣病化する都市に向き合う
 谷口 守

【まちと健康のための施策】

健康まちづくりを支える都市政策の動き ―健康・医療・福祉のまちづくり,歩行量調査のガイドラインについて
 奥田 謁夫

厚生労働省の取組 ―健康になれる環境づくり
 相原 允一

特定保健指導教室におけるモビリティ・マネジメント ―健康福祉部署と都市計画部署の連携プロジェクトとその課題
 谷口 綾子

身体活動を促進する地域普及戦略 ―島根県雲南市の成功事例と世界の最新エビデンス
 鎌田 真光

【座談会】

医療・福祉分野と都市計画分野の連携可能性
 井上 茂×久野 譜也×小泉 秀樹×谷口 守×藤井 聡

【編集後記】
 谷口 綾子・樋野 公宏


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