日本都市計画学会は1951年(昭和26年)10月6日,早稲田大学大隈講堂で開催された総会をもって誕生致しました。今年で設立60周年を迎えることとなります。
初代会長は内田祥三先生,副会長は北村徳太郎氏・石川栄耀氏で,1952年4月時点の会員数はわずか179名,その約8割は行政担当者(会員の約半数は都道府県に勤務する方)でありました。それから60年,都市問題の拡大と複雑化,大学などの研究機関における都市計画研究の活発化,民間コンサルタント・都市開発に関わる企業の成長,多様なNPOの登場などで,今日その裾野は大きく広がっています。
また,この10月3日には,内閣総理大臣より「公益社団法人」の認定を授かり,次の時代はこの新しい組織形態で進んでゆくことになりました。
こうした節目の時を新たな気持ちで迎えるために,学会では創立60周年記念事業実行委員会(委員長:蓑茂副会長)を組織し,さいたま市大宮駅東口地域を題材とした学生提案競技,自治体のまちづくりグッズ賞の選定,過去に学会賞を受賞した60のプロジェクトを取り上げた記念出版,60周年記念シンポジウムなどの企画を準備致しました。
そして,学会誌としてもここに60周年記念号を発行することとしたところであります。
本誌の全体テーマは「2050年の都市像」です。これから40年後,日本都市計画学会が創立100年を迎えるときに,我が国の都市はどういった姿を見せてくれるのでしょうか?
学会が歩んできた60年間は日本で都市化が急激に進んだ時代であり,都市計画の領域が拡大する時代でありました。今,我が国は人口減少の段階に入り,都市計画も新たな課題への挑戦が求められています。また一方で,視野を広げると都市化の波は今も世界中を覆っています。地球的視点では,むしろこれから本格化すると言うべきかもしれません。
我が国の都市が経験してきたことをどう世界に伝えるのか,そして,我が国の都市はこれから先どこへ向うのか,学会の節目は「我々が志向する未来」を今一度見つめ直すよい機会であると存じます。
都市は時を越えて引き継がれるものであり,都市計画に関与する我々は常に省察を繰り返しながら,着実に次の時代に向って歩みを進めて行かなければなりません。学会はこうした皆様の活動を支えるために,今後ともそのプラットホームとしての役割を果たして行きたいと考えております。
引き続き日本都市計画学会の活動にご理解・ご協力,そして積極的なご参加をお願い申し上げます。
最後に,本誌の発行を含め60周年記念事業の実現に際しては,関係団体,数多くの方々から力強いご支援,ご協力を頂きました。また,多くの学会員が裏方として準備に奔走して下さいました。
この場を借りて,ご協力を頂いた皆様に,厚く御礼を申し上げます。
(公益社団法人日本都市計画学会 会長 岸井 隆幸)
60周年記念号の発刊にあたって/岸井 隆幸
[編集にあたって]/羽藤 英二
廃墟から未来へ/磯崎 新×内藤 廣
都市の見えないチカラを読み込む/陣内 秀信×三浦 展
日野を歩く/江東・清澄白河を歩く
第1部 2050年の都市とコミュニティ
流動する人間社会,その見通しの可視化/後藤 春彦
郊外と住まい ─2050年を展望する/大江 守之
少子高齢化時代の家族 ─多様化と格差拡大/山田 昌弘
[座談会]2050年の都市とコミュニティ/大方 潤一郎×大江 守之×山田 昌弘×後藤 春彦
[コラム]変化する社会から必要とされる「都市計画」に向けて/杉崎 和久
[コラム]いま,都市をつくる仕事の可能性/武田 重昭
第2部 周縁の都市計画
【2050年の生活の姿】
家族の変容と社会保障制度改革:互恵社会を目指して/白波瀬 佐和子
都市下層地域における包摂と社会的排除 「福祉の街」へと変化した横浜・寿町/山本 薫子
地域医療・在宅ケアの立場から/黒岩 卓夫
【2050年の都市を支える仕組み・技術】
ITがもたらす「働き方革命」と「コミュニティの変化」/木下 斉
エネルギーシステムから見た都市の未来/山地 憲治
2050年の市民自治とコミュニティにとっての都市計画/名和田 是彦
2050年の「都市」に向けた行政システムのかたち ―国・広域行政・自治体再考/金井 利之
第3部 2050年の都市像
2050年の都市計画制度/中井 検裕
ランドスケープ・リテラシーと都市デザイン/村上 暁信
全体×レイヤーモデルと都市建築空間/饗庭 伸
2050年のモビリティデザイン/羽藤 英二
[座談会]2050年に向けて都市計画はどう考えるか?/大方 潤一郎×中井 検裕×羽藤 英二×村上 暁信×饗庭 伸×三宅 諭
[総括]都市計画ムラから考える/岡田 雅代,羽藤 英二
暮らし・コミュニティコミュニティから問いなおす暮らし・社会像/広井 良典×松川 淳子
国土・地域・国際小さなまちが実践するグローカルな地域づくり/瀬田 史彦×片山 健也
交通交通社会資本:この10年とこれからの10年/屋井 鉄雄×森 昌文
防災21世紀の災害に立ち向かう ─防災研究と実践の融合/牧 紀男×吉川 忠寛
緑地・環境身近な生活空間のみどりから国土のランドスケープまで/池邊 このみ×舟引 敏明
景観・デザイン景観の獲得と共有の彼方へ/窪田 亜矢×朝倉 健吾
防犯研究と実務から見た「都市と犯罪」/小出 治×樋口 建史
都市解析・ツール「都市解析」理論から実践への展開/伊藤 史子×大場 亨
制度実践の知と制度研究の社会的共有に向けて/有田 智一×稲垣 道子
参加現場の知恵や経験から導くプランニング技術の蓄積への期待/小泉 秀樹×泉 英明
人口減少と市街地縮減に伴う課題への対応/小林 重敬
「シェア」する時代の都市計画/浅野 光行
小さな造園家の大きな役割/進士 五十八
新アテネ憲章に出会う/鳴海 邦碩
会長の役割の一側面/大西 隆
都市の生物多様性/武内 和彦
住環境の理論と設計/田畑 貞寿
景観の構造/樋口 忠彦
あづましい未来の津軽/戸沼 幸市
都市の自動車交通(ブキャナン・レポート)/太田 勝敏
LANDSCAPE ARCHITECTURE/都田 徹
DESIGN WITH NATURE/川瀬 篤美
学生提案競技
自治体優秀まちづくりグッズ賞
横浜の防火建築帯のこと/速水 清孝
泉北ニュータウンの計画/富安 秀雄
「スーパーブロック構想」から通りと広場を囲む「囲み空間」へ/佐藤 圭二
大阪湾チャンネル・システムズ1965(21世紀の関西)/小林 郁雄
「杜の都・仙台のすがた」計画/重村 力
環境アセスメントとエコロジカル・プランニングの不幸なすれ違い/磯辺 行久
九十九里地区大規模海洋性レクリエーション基地マスタープラン/鈴木 忠義
沿道囲み型住宅地のマスタープラン ─幕張ベイタウン─/前田 英寿
阪神・淡路大震災「若宮地区復興まちづくりプロセス図」/後藤 祐介
海都横浜構想2059/鈴木 伸治
学会誌の未来/久保田 尚