日本や世界の経済混迷や低成長に各地での災害が重なる今,社会のしくみ全体の見直しが待ったなしで求められている。
近年,まちづくりの場にアート活動が組み込まれる例が増えている。1980年代までは,まち中のアートといえば屋外彫刻や環境芸術と呼ばれるパブリックアートが主体であったが,1990年代以降,地域づくりのプロセスの中で住民・行政・事業者等各主体の関係性の再構築,社会実験,地域の価値再発見が不可欠になっており,アートがより根本的なプログラムづくりから作用している。このことは,都市計画の複合化,総合化の一面として今後さらに検証,開拓していく意義があるだろう。
本特集ではその前提として,工学技術の一分野とされてきた都市計画自体が,arts(本来的な意味で「人が手で身の回りのものをつくること」,同じ語源を持つ「技術」と「芸術」を内包する営為)と再定義するところからはじめたい。近代都市計画のシステム再構築が模索されている今,都市計画の側でもアート(arts)を都市計画自体のあり方を見直す枠組みとして,再考してみてはどうだろうか。
パーソナル・ランド・スケープ;イル・ド・フランスの脆弱性を可視化する
磯辺 行久
バルセロナ(スペイン) ─街路へのあこがれ─
岡部 明子
都市計画はアートか?
鳴海 邦碩
文化政策と都市計画との関係を再考する
鈴木 伸治
フランスに於ける都市計画と都市計画家像の歴史的定義
鳥海 基樹
「都市計画」と「都市」との縁 ─石川栄耀に見る都市計画家像─
中島 直人
モノから都市計画まで ~関係性を形にする環境デザインの視点から
清水 泰博
これから求められる都市プランナーとは?
高鍋 剛
領域の変化からみた「都市をつくる仕事」の可能性と展望
武田 重昭・穂苅 耕介・片岡 由香
現代社会と共謀するアート
吉本 光宏
メセナの動向に見る,企業と地域,アートのかかわり
荻原 康子
[特集対談]あなたはこのまちで誰と何をしたいですか? ~楽しい作業/行為がコミュニティをつくる~
藤 浩志×山崎 亮
水都大阪の再生とアート
橋爪 紳也
クリエイティブシティ・ヨコハマ ~文化芸術による横浜都心部活性化~
秋元 康幸
都市とアートのあいだの公共的価値をめぐって ─登戸でのアートプロジェクトなどから見えてきたもの─
田中 友章
向島のアートプロジェクトと〈モクミツの遺伝子〉
曽我 高明
金沢における市民が取り組むアートとまちづくり クリエイティブツーリズム,チャリdeアート,町家共同アトリエの取り組み
坂本 英之・水野 雅男
アートプロジェクトと「まちづくり」 別府からのレッスン
牧田 正裕
芸術がまちの記憶をつくる
五十嵐 太郎
編集後記:「都市計画はアートか?」の問いのあとに
椎原 晶子
市民による防犯まちづくりとアート 愛媛県松山市「福音公園」の事例研究
仙波 英徳
NPO法人尾道空き家再生プロジェクト ~尾道市中心部斜面市街地での空き家再生と空き家バンク~
新田 悟朗
東日本大震災被災文化財復旧支援活動に関して
稲垣 光彦
弘前からの招待状②
北原 啓司
大阪府立大学大学院生命環境科学研究科緑地環境科学専攻 緑地計画学研究室
ベルギーにおけるターミナル駅整備
丹羽 健治
モンゴル国ウランバートル市における都市交通の近年の動きと市民活動の新しい方向性
ナヤンバートル・アマルジャルガル
スモール・イズ・ビューティフル
ティトゥス・スプリー