刊行

都市計画304号
食とまちづくり

 日本の町や村を語る時,食の話題は欠かせない。テレビ番組も食に関わる番組は実に多種多様である。テレビでタレントが物を食べるのを映して,何万人もの視聴者が楽しむのが,外国人には不思議らしい。旅をするうえで,旅先で出会う特産の食べ物は重要な楽しみであろう。海や山の多様な食材と,その調理法の多様さは日本の誇る文化である。大災害の後,最初に対応しなければならないのが医療と食料である。食事はエネルギー供給以上の意味がある。会議やワークショップの後の懇親会は,コミュニケーションを深化させる効果があることは誰もが知っている。

 ところで私は現在新潟の山村で集落活性化に取り組んでおり,株式会社法末天神囃子というソーシャルエンタープライズの経営を担っている。持続的に取り組み,雇用も生み出すためには,収益を確保する覚悟が必要と考えている。収益の柱の一つが,農産物の加工販売であるが,商品企画,生産設備および人員体制,そして販売営業体制と様々なマネージメントスキルが求められている。伝統的食材と調理法は種類が豊富であり,商品企画には事欠かないが,都市部での販売促進の営業戦略についてのイメージが膨らまず,せっかくの食品もなかなか製造販売にこぎつけずにボツになってしまう。安定的な収益構造の条件が知りたいと痛感している。

 このような必要性から,本特集では食のビジネスモデルの事例を多く扱ったつもりだが,そのなかでも丸の内で成功しているレストラン「とかちの・・・」の収益構造を支える秘密と,レストラン情報サイトぐるなびの利用価値に注目したレポートは実戦的視点からまとめた。食のコミュニティビジネスに取り組んでいる方の参考になればと願っている。

(編集担当:宮田 裕介)

目次

地図の中の風景

見沼代用水とウォーキングマップ
 松下 潤


私が出会ったまち

矢吹町(福島県) ―旅するカレー
 加藤 文俊


特集論文

テリトリアル・キャピタルとしてのフード
 後藤 春彦

[インタビュー]料理記者歴60年岸朝子氏が語る日本の食
 岸 朝子

6次産業化・農商工連携のビジネスモデルと地域再生
 斎藤 修

「食」×「女性」で展開するコミュニティ・ビジネス
 鵜飼 修

日本のフードセキュリティ ─食糧安全保障を考える
 柴田 明夫

食品のリスク
 唐木 英明

「生活の質」と「環境の質」の,よりよい共生をめざすまちづくりを ―社会福祉法人K発ワークシート“こんな共食の場がほしい”を事例に
 足立 己幸・谷口 友子

ネット時代の食文化革命 ぐるなび1000万会員ウェブサイトのインパクト
 栗田 朋一・竹内 則友

東日本大震災と東北の食復興
 婁 小波

食の地域間連携
 吉沢 保幸

[インタビュー]キッチンが走るまち
 安出 光伸・湯谷 幸司

関西の食と都市計画
 難波 健

町づくりと芸術の互恵関係  ―三宅航太郎「おしょくじ」アートプロジェクトの展開から
 小森 真樹

屋台のあるまち 福岡市における屋台問題と解決策
 八尋 和郎

鮫川村の里山の食と農、自然を活かすむらづくり ~大学と地域との連携~
 入江 彰昭

「食」と「農林漁業」と「地域づくり」
 林 賢一

韓国の美味しい町を訪れて
 八田 靖史

食空間学からの都市計画:フランスと日本の比較計画論
 三宅 正弘


書籍探訪・新刊レビュー|情報委員会


大会へ行こう

会場周辺の都市史と地形
 陣内 秀信・小松 妙子


都市計画を学ぶ

山口大学 大学院理工学研究科 都市計画・都市設計研究室


海外特派員だより

スウェーデン・スコーネ地方のトラム熱
 伊藤 俊介

マレー鉄道線跡地の未来
 木下 光


私の見た日本

歴史都市のまちなみ変化の目撃
 ウスビ・サコ


支部だより|北海道・東北・中部・関西・中国四国・九州支部


報告

日本都市計画学会賞・特別功労表彰・年間優秀論文賞
 表彰委員会・学術委員会


学会ニュース