2013年12月4日,第185回国会において,障害者の権利に関する条約(通称:障害者権利条約)の締結が承認された。これを受け,2014年2月,障害者権利条約は我が国において効力を生じることとなり,日本の障害者政策は大きな転換点を迎えた。「障害者権利条約」では,従来の「医療モデル」の考え方により障害者自身が変わるのではなく,「社会モデル」の考え方により社会の側が変わることが求められている。まちづくりに関しては,ユニバーサルデザインの推進に加え,アクセシビリティの確保,「合理的配慮」の提供,当事者参加の確保などが求められている。
一方,2013年9月7日の2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催決定を受け,6年後を見据えたまちづくりのあり方に注目が集まっている。特に,ロンドンではパラリンピックの対応が大きく評価されたことから,2020年東京で行われる大会では,それを超えるバリアフリー対応などに期待が寄せられている。日本のバリアフリー施策は,1970年代からの障害当時者を中心とする「福祉のまちづくり運動」を経て,自治体の取組からはじまり,今日では2006年12月に施行されたバリアフリー法等に基づき,公共交通施設や建築物等のバリアフリー化が進められ一定の進捗がみられるものの,地方都市におけるバリアフリー進捗の遅れ,災害時・緊急時等の対応,多様な障害への対応,移動以外のアクティビティへの対応等の課題も見えてきている。また,ソフト面についても,情報・コミュニケーション障害への対応や,「心のバリアフリー」の遅れなども指摘されている。
新たな節目を迎えた障害者施策や2020年東京パラリンピックの開催を念頭に,最新の研究や活動の動向等を踏まえつつ,障害のある人もない人もともに生活できる共生社会を実現する「インクルーシブなまちづくり」を推進する上での課題,求められる視点等について議論する。
(編集担当:杉浦 美奈・杉崎 和久)
中井 検裕
触る観光を楽しむ地図
室﨑 千重
旭川市の平和買物公園
秋山 哲男
【総論】
障害者の実態に係る基礎的データについて
杉浦 美奈
権利としての「インクルーシブなまちづくり」への発展過程と技術 ―お互いを尊重する共生のためのデザインへ
八藤後 猛
「障害者の権利に関する条約」と障害の「社会モデル」について
外務省総合外交政策局人権人道課
バリアフリー法に基づく取組の状況と今後の課題
国土交通省総合政策局安心生活政策課
障害当事者の視点から考えるまちづくり ―情報・コミュニケーション環境を中心に
中野 泰志
【インクルーシブなまちづくりの現状と課題】
ロンドンのインクルーシブ・デザインの展開 ―オリンピック・パラリンピックに向けた環境整備
坂井 文
障害者の地域生活を取り巻く状況と課題
松田 雄二
わが国における地域交通制度の変遷と今日的課題
吉田 樹
公園とインクルーシブデザイン
美濃 伸之
災害時・緊急時における障害者の避難 まちづくりによる避難環境の向上
朝日向 猛
「音」のサイン計画
関 喜一
情報バリアフリー・ICT利活用 ―豊かな生活や活動シーンを支えるICT利活用
海保 裕一
【取組事例】
世田谷区のユニバーサルデザイン スパイラルアップで街をつくる
高木 加津子
心のバリアフリーを要としたまちづくりの総合施策 ―荒川区の参加者主体による取組み
長野 博一
高槻市のバリアフリーに関する取組 ―「人にやさしいまち,人がやさしいまち」を目指して
江嶋 啓太
熊本県におけるやさしいまちづくりの取組み
熊本県健康福祉政策課福祉のまちづくり室
愛知における「ひとにやさしいまちづくり」 ―NPO法人ひとにやさしいまちづくりネットワーク・東海の活動を通して
浅野 健
まちなかに障がい者の社会活動の場をつくるというまちづくり ―障がい者就労支援事業所の運営を通じて
田中 隆一
バリアフリー障害当事者リーダー研修の実践 ―障害当事者によるバリアフリー障害当事者リーダーの人材育成の取組―
今西 正義
当事者参加から当事者主体のまちづくりへ ~バリアフリー基本構想の住民提案制度を事例として~
神吉 優美
障害者の多様なニーズを活かすための障害アドバイザーの役割
大河内 直之・杉崎 和久
将来の土地利用転換への予防策としての特定土地利用地区(特別用途地区)の指定
福田 浩・上島 拓也
来んさい東広島へ3
高井 広行
カナダにおける格差拡大と分極化に対する近隣レベルの挑戦
藤井 さやか
バンコク大通り再生:協議型計画策定の試み
パンノイ・ナッタポン
古代の精霊と生きる
ホアン・マヌエル・ガルベス・カルバハル
学会賞・特別功労表彰・年間優秀論文賞