他の学会誌でも地方創生についての特集が最近数多く見られる。都市計画と地方創生は親和性が高そうではあるが,しかし実のところ具体的にはどのような関係にあるか,あまり整理されていない。そんなこともあり,今回地方「創生」についての特集を企画した。ただし,「創生」とカギ括弧をつけたのは,政策に対する様々な疑問からである。いったい「創生」(英語ではrevitalization,らしい)とは各地方にとってなにを意味するのだろうか?
また,地方創生については2014年の「増田レポート」を契機に,全く異なる立場からの議論が併存している。それを公平に見ながら,都市計画・まちづくりの分野から地方「創生」をいかに考えるかと言うことが本特集の趣旨である。
なお,立地適正化計画については「まち・ひと・しごと創生総合戦略」中で位置付けられた,都市計画分野において重要な政策ではあるが,本特集ではそこにはあえてフォーカスしていない。今回は「創生」される地方を考えるという意味で,国土計画のこれまでの状況分析から現在の地方「創生」のあり方について示唆されること,また,東京一極集中ということへの議論と,都市・農村・郊外・交通という視点からの「創生」の論点,方法論として「創生」を考えるためのデザイン手法,そして各都市での実践とその意味について寄稿いただいた。「自治体消滅」といった衝撃に基づいて議論する地方創生では無く,冷静に実情を認識しながら,我々がこの地方「創生」というものの存在の上でなにができるのかを考えていきたい。なお,本特集では東京圏もひとつの「地方」として捉えている。
(編集担当:内田 奈芳美)
南国土佐を前にして ~時空を越えた空中散歩~
野中 勝利
【地方「創生」のこれまでとこれから】
わが国の地方計画に関する個人史的概説と将来展望
後藤 春彦
地方振興の変遷と地方創生政策
瀬田 史彦
全国総合開発計画が地域にもたらしたもの ―富山県を例に
佐野 浩祥
地方創生を日本列島改造論から考えてみる ―列島改造論に携わった小長氏へのインタビューと,列島改造論の検証から
内田 奈芳美
【地方「創生」の論点】
地域公共交通と地方創生
小嶋 光信
地方創生のなかの都市と農村
山下 祐介
大都市と地方創生
八田 達夫
東京圏の「地方」
三浦 展
【地方「創生」のデザイン手法】
人口減少×デザイン 住民参加を促し,地方創生への気運を高めるデザインアプローチ
筧 裕介
地域経済分析システム(RESAS:リーサス)の成果と展望
内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部事務局
【地域からの「創生」と実践】
地域イニシアチブを起点とした地方創生の思考と実践への脱構築
真野 洋介
地方都市「論」 ―福井のケース
野嶋 慎二
氷見市・創生戦略とその実践 ―ワーク・イン・プログレスによる「まちのグランドデザイン」に向けて
真野 洋介
子育て世代に選ばれる街づくり戦略
井崎 義治
規制緩和による地方創生 ―国家戦略特区養父市の挑戦
福島 徹
バイオマス産業杜市“真庭”を目指して ―地域資源を使いきる仕組みの構築を―
森田 学
モビリティとコミュニティ維持のためのオンデマンドバス ―三重県玉城町での実験などを通して
大和 裕幸
鯖江市体験移住事業「ゆるい移住」プロジェクト ~とりあえず住んでみて田舎のまちをゆるく体験
法水 直樹
【編集後記】
内田 奈芳美
立地適正化計画の策定を巡る論点
村山 顕人・寺田 徹
立地適正化計画制度の活用に向けて
鎌田 秀一