刊行

都市計画331号
駅再考 ―これからのまちと駅の関係

 都市にとって駅の持つ意味と役割は多様である。鉄道の起終点,乗り換えの結節点という,交通機関としての機能のみならず,商業拠点等の機能を担いつつある。従来,都市を計画する側は,交通の機能を本来機能,その他の機能を派生的機能として整理してきた。

 しかし,駅の機能を,そのような制度的な主従関係で整理するだけでは,これからのまちとの関係を捉えることは難しいと考えられる。ここで一度,駅が都市の生活者を含む各主体に影響を与え,都市の各主体の駅の利用形態を受け止めつつ駅が変化してきたことの蓄積として,各地の駅の機能を再考するべきではないだろうか。

  その機能のなかには,象徴,愛着の対象といった社会的な内容も含まれるであろう。多くの駅には,創設以来,社会状況の変化を受けた周辺地域の土地利用の変遷,利用者の世代交代などの経緯について,歴史の地層のような蓄積があると考えられる。駅とその周辺の今後を考える上で,これまで蓄積されてきた,あるいは現在進行形で蓄積されつつある,駅に関わる各主体の関係性を見つめ直すことが,新たな地層として何を積むことができるのかを考える重要なヒントとなると考え,本特集のタイトルを「駅再考」とした。

  そのような取組は,すぐに駅としての新しいインフラ,新しい空間づくり等に結びつくものではないかもしれない。しかし,それぞれの駅と周辺地域の関係の再考と,その記録・蓄積は,それ自体が駅に関わる各主体の関係を維持・拡大することにつながり,周辺地域側の地域社会継続のためのソフトも含めた,今後の検討の幅を広げうるものである。

本特集が読者の皆様の「駅再考」の機会となれば幸いである。

(編集担当:大島 英司・谷口 綾子・山田 大輔)

目次

地図の中の風景

バスマップ―わかりにくい公共交通情報の象徴
 今井 理雄


支部トピックス


特集:駅再考 ―これからのまちと駅の関係

【導入】

特集「駅再考 ─これからのまちと駅の関係」の視点
 大島 英司・谷口 綾子・山田 大輔

駅の歴史と都市 ―まちはずれからまちなかへ
 青木 真美

【駅の意味】

文学の中の駅
 小関 和弘

鉄道や駅の歌に見る都市の近代
 大島 英司

【まちの成り立ちと鉄道駅導入の経緯】

乗換駅としての佐貫駅開設の経緯とその後の変容
 白土 貞夫

横浜の成り立ちと横浜駅の変遷
 石井 高幸・村田 功

甲府の歴史と甲府駅の開業 ―城下町と甲府駅
 甲府市 建設部まち開発室都市計画課

鉄道駅との空間的関係からみた繁華街の位置とにぎやかさを分析する
 吉川 徹

【交通結節点としての駅】

駅前広場・結節点におけるコンフリクトと工夫 ―コンフリクトに対する工夫例の紹介
 幡歩 浩司

都心部ターミナル駅における周辺公共空間の整備について ―東京駅丸の内の事例
 白根 哲也・遊佐 謙太郎

駅前広場とまちのつながり ―JR姫路駅北駅前広場「城を望み,時を感じ人が交流するおもてなし広場」が創る街の造形
 東田 隆宏

使われる駅前広場の計画・設計
 大藪 善久

【「エキナカ」「エキチカ」商業施設の功罪】

青森駅周辺の商業施設
 大櫛 寛之

エキナカ戦略と周辺商店街
 飯村 博

【駅のにぎわいと鉄道利用】

図書館を併設した三岐鉄道大安駅について ―大安駅開業のいきさつとその効果
 雨澤 隆生

茅野駅を中心としたパートナーシップによる市民活動拠点づくり
 倉田 直道

高架下で地域とひとをつなげる ―中央線高架下プロジェクト「コミュニティステーション東小金井/モビリティステーション東小金井」の取り組み
 古澤 大輔

【都市政策における今後の駅の役割】

立地適正化計画における拠点と駅について
 山田 大輔, 江副 遙子

今後の交通結節点整備について
 石井 友博

【駅の未来】

これからの鉄道駅と都市計画
 中村 文彦

【編集後記】
 谷口 綾子・大島 英司


連載 立地適正化のプラン・メイキング

広島県府中市立地適正化計画について ―「住みたい」・「住み続けたい」と思えるまちづくりの実現に向けて
 川崎 智隼


国際協力の都市計画

初めてのまちづくり ―ミャンマー国ヤンゴンの歴史的地区における試み
 平野 邦臣


書籍探訪・新刊レビュー|総務・企画委員会


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