1999年,自治体の行財政基盤強化を目的として地方分権一括法が公布され,平成の大合併が始まった。背景には,地方の過疎化が進み,自治体の経営が立ち行かなくなる,それに対する国の支出が多くなるという問題があった。
その結果,2010年末までに自治体の数は約6割になった。行政単位で見れば,確かに合併によって人口規模は大きくなった。しかし,実態を見てみれば,人口密度が低い,特に周縁部は過疎化や高齢化が起こっているという状況が解消されたわけではない。行政組織の「合理化」によって人的資源を削減し,少なくなった職員で広域な行政区域を管理することによる問題もあるだろう。また,合併された周縁部の地域では,行政の中心と距離が出来ることとなった。それらが独立した自治体だったときとは異なり「主役」ではなくなったために,地域イメージを打ち出しにくくなったり,地域独自の政策が打てなくなったりもしている。
そこで本特集では,合併によって併合された周辺部や,小規模自治体同士が合併した各地域に着目し,財政レベルではなく,人々の生活レベルで平成の大合併を総括したい。またそのうえで,小規模自治体が小規模な状況を維持したまま地域運営の問題を解決する方法,さらに踏み込んで活力ある自治体になるにはどうしたらよいのかについて考察したい。そこから見えてくることは,合併しなかった自治体だけでなく,合併を選んだ周縁部の地域が,より元気に存続していくためのヒントにもなると思われる。
(編集担当:真田 純子)
且那衆が描いたまちの青写真《岐阜新市街因》
出村 嘉史
久保田 尚
【解題】
特集「小規模自治体の模索」のねらいと構成
真田 純子
【総論】
広域合併都市の可能性と課題 ―小規模自治体のアンチテーゼとしての広域合併都市
福島 茂
「平成の大合併」からみた小規模自治体の「自治」
丸山 真央
合併を選んだ町,徳島県那賀町 ―規模を生かして問題を解決する
坂口 博文
130年間,合併しない村,徳島県佐那河内村 ―自治の力で問題を解決する
松尾 肇
【市町村合併の実態】
市町村合併に関わる公共施設再編の実態
浅野 純一郎
合併都市自治体における都市内分権
釼持 麻衣
「市町村合併」は「経済」に何をもたらしたか ―移動・観光・財政からみた九州における小規模自治体・合併周縁部の現状と課題
大井 尚司
合併自治体における地域公共交通政策と今日的課題 ―東北・関東地方におけるケーススタディ
吉田 樹
中山間地域における福祉の現状と市町村合併の影響 ―岩手県を例に
若菜 千穂
市町村合併と災害対応力
室崎 益輝
【自治体間連携】
連携中枢都市圏構想について
海老原 諭
定住自立圏構想について
御給 健治
フランスの自治体間協力型広域行政組織 ―その制度的発展と近年の(直接/間接)民主主義改革
中田 晋自
イタリアにおける「再国家化」下の小規模自治体(コムーネ)と市民社会 ―「ボルギ」を支える環境・協同・文化の市民運動の可能性
田中 夏子
米国における地方政府の増加とその影響 ―小規模な地方政府と成長管理を中心に
辻 琢也
【今後の向けて】
人口減少・高齢化社会における地方都市の買い物支援
岸 邦宏
オーダーメイドは良いけど高価?
佐々木 邦明
基礎的な生活圏における拠点配置の現状 ―中山間地域における「小さな拠点」の必要性と可能性
藤山 浩
【編集後記】
真田 純子
都市再生特別措置法等の一部を改正する法律 ―都市のスポンジ化対策
国土交通省 都市局都市計画課
大阪へ来たってや! ―②交流のまち大阪へようこそ
武田 重昭・小浦 久子
都市と交通をつなげるTOD型まちづくり ―バンコクのターミナル駅周辺における試み
森尾 康治・森川 真樹
第7 回 定時総会(社員総会)議事録
理事会
学会賞・特別功労表彰・年間優秀論文賞
表彰委員会・学術委員会