東日本大震災において,都市計画はどんな役割を果たしたのだろうか?
被災された会員,復興を現場で主体的に担った会員も少なくない,また主として研究・教育の面から,被災地域に身を置き,多くの学びを得てきた学会員も多数に及ぶものと思われる。
本学会における情報共有・発信の経緯として特集号の発行を振り返れば,2011.06(291 号)の緊急特集号を皮切りに,2011.08(292 号)都市と地域システムの脆弱性と強靭性:東日本大震災を踏まえて,2012.04(296 号)東北の現在と未来-震災1 周年の現在,2012.10(299 号)東日本大震災からの復興と今後の防災,2014.10(311 号)福島の復興まちづくり,2015.12(318 号)防災・減災に向けた都市・地域づくり,2019.03(337 号)これからの都市・地域のリスク・マネジメント,と全部で8 回の特集が組まれてきた。
本号では,改めて東日本大震災の被災地復興にフォーカスし,都市計画学会としての初動対応,復興法制の立法と改正,復興事業制度の創設と成果,復興中心市街地でのエリア・マネジメント,復興集落コミュニティのデザインといった取組みの到達点を論考する。その上で,東日本大震災復興の延長としての熊本,国際防災,南海トラフ沖巨大地震,また新型コロナ感染症の影響も踏まえた避難対処行動について取り上げる。
建築・土木・造園といった隣接分野における復興10 年の検証も同時並行でなされていると聞く。本特集号は,そういった隣接領域でのレビューも横目にしながら,都市計画が担った役割を検証し,国内外の巨大震災,および広域化・激甚化する気象災害も含めた都市計画の活動を展望していく一助になればと考える。
(編集担当:市古 太郎・前川 裕介・姥浦 道生)
「二重のまち」を生きる
瀬尾 夏美
【口絵】
都市復興・エリアマネジメントに関連する法制度・施策等の取組経緯
前川 裕介
【東日本大震災後に創設された復興計画制度と都市計画が果たした役割】
都市復興・エリアマネジメントに関する法制度・施策の系譜 ─東日本大震災以降の既往災害を踏まえた施策展開
前川 裕介
東日本大震災被災地復興の10年 ─「都市計画」はどのように機能したのか
岸井 隆幸
東日本大震災時及びそれ以降の復興制度に関する内容及び課題について
佐々木 晶二
東日本大震災以降の津波防災都市づくりの展開と課題
木内 望
東日本大震災からの復興における空間計画とデザイン
姥浦 道生
福島復興10年間の到達点と課題 ─総合的な検証と原子力災害の特質に即した法制度の必要性
川﨑 興太
【座談会】
復興と共創のエリア・マネジメント
臂 徹×苅谷 智大×渡邊 享子
復興にむけた市街地整備と官民連携のまちづくり
小林 典明×末 祐介×菊池 雅彦
【沿岸コミュニティと復興デザイン】
復興空間デザイン論(低地+高台のトータルプランニング) ─被災漁村の生業と暮らしの復興のかたち
富田 宏
石巻市北上町にっこり団地震災復興計画の「図」の変遷 ─計画段階の「図」から読み取れる事業の変化と,変化を加えた主体とその理由
手島 浩之
大船渡市越喜来地区における地域主体の復興まちづくり ─日本都市計画家協会の復興支援活動
内山 征
地域コミュニティを基点とした立体的復興まちづくり ─岩手県釜石市,大槌町,陸前高田市における実証的研究
似内 遼一・後藤 純
【東日本から熊本へ,国際防災へ】
熊本地震の復興における東日本大震災からの学び ─復興まちづくりを中心に
柴田 祐
横浜戦略・兵庫行動枠組・仙台防災枠組と日本の防災の知見 ─3回に亘る国連防災世界会議での国際枠組の進展と日本の経験の反映と貢献
西川 智
【南海トラフ巨大地震に向けた事前津波防災】
南海トラフ地震に係る被害想定リスクが高い地域等における事前防災まちづくり
牧 紀男
沼津市における事前段階での高台移転の取り組み ─農地区画整理事業を活用した移転先宅地の確保
池田 浩敬
[対談]小規模漁村における地域継続と事前復興 ─徳島県美波町・伊座利地区における防災エリアマネジメントの取り組み
草野 裕作
【災害時の移動と感染症対策】
災害時における移動の計画とマネジメント ─東日本大震災から10年
廣井 悠
新型コロナウイルス禍における効果的な災害対応を実現するための6つの観点
沼田 宗純
【編集後記】
市古 太郎・前川 裕介・姥浦 道生
誇りと想像力がつくる対話的つながり ─生涯学習の観点から
牧野 篤
自然保護から持続的利用へ ─里山グリーンインフラの取り組み
西廣 淳
都心まちづくりとオフィス機能のパラダイムシフト
梅澤 高明