刊行

都市計画356号
これからの国土像と国土計画の役割

 2005 年に国土総合開発法を改正した国土形成計画法が制定されてから17 年が経つ。法改正のねらいは,それまでの量的拡大・開発基調の計画を成熟社会型計画に転換すること,地方分権を反映して国と地方の協働による国土・広域計画へと変えることであった。これまで二次にわたり,国土形成計画全国計画と8 つの広域地方計画が策定されたが,メディアによる報道や学会の動向をみても,国土計画に対する関心は高いとは言えない。国土計画はもはや不要なのだろうか。

 この17 年の間も,国土を取り巻く環境は大きく変化してきた。急速に進む人口減少と高齢化,大都市への人口の偏在と地域格差,空き地や耕作放棄地の拡大,東日本大震災からの復興と巨大災害の切迫,頻発する豪雨災害,気候変動,SDGs など,国土に関わる様々な課題がある。人口の偏在に伴う問題に対しては,消滅可能性都市の公表やそれを受けた地方創生政策が行われてきたし,第二次国土形成計画で示された「コンパクト・プラス・ネットワーク」は,立地適正化計画や地域公共交通計画の取組みにも繋がっている。最近では,新型コロナウイルスの感染が拡大する中で東京一極集中の弊害があらためて注目され,デジタル化の推進や地方移住への関心の高まりも相まって,国土構造に変化をもたらすことへの期待もある。2021 年6 月には,国土審議会の専門委員会により「国土の長期展望」がとりまとめられ,次の国土計画に向けた議論も始まった。

 先が見通せない時代に,どのような空間像を目指していくべきなのか。そのための国土計画はどうあるべきなのだろうか。本特集では,これまでの国土形成計画を振り返りつつ,これからの国土像と国土計画のあり方を考えたい。

(編集担当:片山 健介・福田 崚)

目次

地図の中の風景

高度経済成長期の国土計画
 川上 征雄


支部トピックス


【口絵】

国土計画の変遷と関連法制度・国土の変化
 片山 健介・福田 崚

【国土計画の過去と未来】

[座談会]これからの国土像と国土計画の役割─国土形成計画を振り返り今後のあり方を考える
 青柳 一郎×大西 隆×増田 寛也×矢田 俊文

[インタビュー]国土の将来ビジョンと歴代政権─国土計画と政治の関係はどのように変化してきたか
 御厨 貴

新たな国土形成計画の策定に向けて─「国土の長期展望」と計画策定に向けた検討について
 国土交通省 国土政策局総合計画課

【様々な国土像と国土計画】

日本の産業集積・地域産業政策の変遷と政策課題─ソフト・コンパクト・デジタル化
 大久保 敏弘

経済活動の観点から見た分散型国土構造の実現可能性─新型コロナウイルス禍の下での人口移動の分析を通じて
 福田 崚

国土計画における大都市圏の役割
 市川 宏雄

超電導リニアによる中央新幹線計画─次世代の扉を開く新幹線の誕生
 澤田 尚夫

広域的生活圏の集合体としての国土の計画
 姥浦 道生

ウィズ・コロナにおける地域創生のあり方について─新型コロナによる価値観変容などを契機に地域の多様性や強みを活かした取り組みを
 白水 照之

観光によって人々が交流する国土─観光概念の拡張へ
 佐野 浩祥

国土を捉える枠組みとしての「生態系サービス」
 橋本 禅

森林エリアのマネジメント─生態系メカニズムの尊重と森林データの活用
 相川 高信

脱炭素社会への環境政策と国土像
 浅野 直人

計画なき国土の中で
 羽藤 英二

【プランニングとガバナンス】

圏域の重層化と国土形成計画の課題
 瀬田 史彦

広域地方計画の課題と展望
 山崎 幹根

空間情報を活用した自治体のプランニング─自治体におけるDXによるEBPMの実現に向けた取り組みと課題
 秋山 祐樹

【編集後記】
 片山 健介・福田 崚


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