刊行

都市計画371号
都市・地域計画における規制緩和の功罪 1995-2024

 この30 年,都市再生政策として,様々な都市の規制改革がなされてきました。特に民間活力の導入を目的として,規制緩和と民間主導を取り入れた都市再生特別措置法に基づいた都市再開発事業が数多く実施されてきました。都市計画における規制緩和の幅広な導入に対して,都市計画学会では,1995 年の学会誌195号において,「都市計画分野に係る規制緩和の諸問題」として特集され,規制改革の在り方についての議論がなされ,2003 年の学会誌241 号にて,「都市再生政策は都市空間をどのように変えるか」,と題して都市再生特別措置法によって都市がどう変わっていくのかを展望しています。これら2 度の特集では,規制緩和が都市にどのような影響をもたらすのか,様々な期待が示される一方,多くの懸念点が述べられ,それにどう対応していくのか,都市計画学会の在り方などについても議論がなされてきました。

 ここで,これらの特集から約20 年,30 年を経過した今,当初の懸念や期待が現実的にどうであったかを振り返り,今後の都市の在り方について,この経験から学ぶことを目的として特集を企画しました。本特集では,都市再生だけでなく,都市にかかわる様々な分野において同様に行われてきた規制緩和や,その理論的な背景についても取り上げています。このような多様な著者による網羅的なレビューが,今後の都市計画および都市計画学会の在り方に向けて,有益な示唆をもたらすことを期待しています。

(特集担当:佐々木 邦明・羽鳥 剛史)

目次

地図の中の風景

芝浦エリアの変貌
 桑田 仁


支部トピックス


特集:都市・地域計画における規制緩和の功罪 1995-2024

【都市計画制度における規制緩和】

[インタビュー]都市計画制度における規制緩和の歴史とその功罪
 和泉 洋人

【規制緩和の政治哲学・計画論・経済学・社会学】

規制緩和をめぐる建設的な議論の場を作るために─政治哲学的考察
 施 光恒

計画論としての規制の役割─国土計画・都市計画における思想としての規制
 藤井 聡

都市における規制緩和の経済学的な位置付けの紹介─福岡市中心部の建物高さ規制の効果推定を通じて
 高山 雄貴

社会学の視点から見た規制緩和の都市的帰結
 町村 敬志

【都市再生と規制緩和】

[インタビュー]都市再生における規制緩和の都心区における意味とこれからの都市計画
 吉田 不曇

自治体主権の枠を越えた都市計画法制の2 つの方向─国家戦略特別区域と都市計画の提案制度
 明石 達生

都市計画の規制緩和の光と影─東京都の都市再生緊急整備地域の分析
 松行 美帆子

都市再生特別措置法と都市再生特別地区─日本型公民協働の課題
 有田 智一

【規制緩和事例とその功罪(土地利用,道路利用,プレイヤー,モビリティ,物流,農業)】

香川県における線引き廃止の経緯とその影響
 紀伊 雅敦・土井 健司

道路空間再編と規制緩和
 白水 靖郎・藤善 隆次・岡田 哲也・田ノ畑 聡史・梶川 遥奈

エリアマネジメントと規制緩和─渋谷駅前エリアマネジメントの事例
 横山 和理・太田 雅文

PPP/PFIの25年─経緯と評価
 宮本 和明

地域公共交通の規制緩和の功罪─鉄道・乗合バスに着目して
 土井 勉

新たなモビリティの規制緩和─思考停止の日本人,大丈夫?
 谷口 綾子

物流規制緩和政策の展開と評価─トラック輸送事業の政策を中心に
 野尻 俊明

貨客混載事業に関わる規制緩和と課題─持続可能な地域形成の視点から
 吉武 哲信

農業の規制緩和・貿易自由化の功罪
 鈴木 宣弘

都市住民の住生活機能を担う都市農地の実現─農地区画の一部転用と周辺所有地の一体的利用による農的空間の創出を事例として
 小松 萌・有賀 隆

【195号座談会の登壇者がこれまでの30年を振り返る】

規制緩和:一担当者のつぶやき
 柳沢 厚

[インタビュー]これまでの規制緩和の課題と今後の規制のあり方
 今井 晴彦

都市計画の規制緩和と分権化・市民化:40年をふりかえる
 大方 潤一郞

【編集後記】
 羽鳥 剛史・佐々木 邦明


官民連携による公共空間の利活用を通じたウォーカブルなまちづくり

歩行者優先道路がもたらす主観的幸福感に関する分析
 小嶋 文


書籍探訪・寄贈図書レビュー|企画調査委員会


わたしとあの街

ウィーン(オーストリア)
 新保 奈穂美


追悼

計画論の探求者・渡邉俊一先生
 秋本 福雄


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