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会長就任あいさつ


渡邉 浩司 Hiroshi WATANABEwatanabe.jpg
一般財団法人民間都市開発推進機構 常務理事

このたび、理事会の皆様からのご推挙をいただき、第39代会長の重責を務めさせていただくことになりました。私自身は、もともと国土交通省出身であり、行政の実務者として都市計画に携わってまいりました。このような自分を学会の会長にご推挙いただいたことは、私自身、とても驚きであると同時に、この責務の重さに身が引き締まる思いです。
はなはだ微力ではございますが、歴史と伝統のある都市計画学会のより一層の発展に向けて努めてまいる所存です。どうぞよろしくお願い申し上げます。

これまで、本学会については、事業委員会や東日本大震災の復興等で関わり、その後、2020年から常務理事・事業委員長、2022年から副会長・表彰委員長を務めてまいりました。ちょうどコロナ禍の時期と重なり、学会がコロナ後の新しいあり方を模索しつつ、大きく変化しようとする時期に、出口元会長、森本前会長のもとで運営に携わる機会をいただきました。
 
社会をめぐる様々な状況が大きく変化する中で、都市計画も大きな転換期を迎えています。私自身も、都市計画の実務に携わる中で、行政主導による右肩あがりの都市の成長に対応するための都市計画から、公民連携による人間中心で持続可能なまちづくりへと方向性が変化していることを肌で感じていました。変化に対応すべく、行政側の立場で取り組んでまいりましたが、力及ばず制度的にも実体的にもまだまだ対応ができておらず、忸怩たる思いを感じていたところでもありました。コロナ禍を経てさらに変化が加速する中で、今の時代ほど、産官学民が連携して、変化に対応した都市計画の転換に取り組む必要性が高まっている時は無いと言えるかもしれません。

本学会では、コロナ禍の中で出口元会長が、社会課題対応、国際化、実務と学術の連携、地域連携と普及啓発、学会オンライン化という5つの方針を示され、森本前会長が、「人」の交流をフィジカル、サイバーの両面で強化していくという取り組みを打ち出されました。これらを受け継ぎつつ、実務出身の会長として、産官学民の連携をさらに強化し、変化に対応する取り組みを進めていきたいと考えています。

まず、社会課題の変化への対応です。人口減少高齢化、豪雨や地震などの災害の頻発、地球温暖化の進展、AIをはじめとするテクノロジーの進化など、様々な社会課題の状況や質的変化に伴い、都市計画に求められる内容も高度化してきており、対応は待ったなしとなってきています。学会としても、たとえば1月に能登半島地震が発生した際には、すみやかにタスクフォースを組んで活動を開始するなど、対応に努めているところです。さらに今後想定される各種災害への対応や、脱炭素社会の実現、スマートシティへの対応など、取り組みを強化していきたいと考えています。

次に、都市計画における価値観の変化への対応です。都市のストックが圧倒的に不足していた時代は、良好な都市空間の量や機能を確保するために「つくる」ことが都市計画の中心でした。近年は、たとえばウォーカブルなまちづくりといわれるように、作ったあとにどう「使う」のか、都市空間を人々が居心地よく過ごせるように使いこなしていくことが都市計画に求められる時代になってきています。公共空間の利活用、敷地や建築物の暫定利用、リノベーションなど、公民が入り混じった様々な取り組みが、従来の都市計画の枠を超えてアジャイルに先行し、社会実験やエリアマネジメント等が各地で展開されています。こうした様々な実践を踏まえ、都市空間のデザインやマネジメントのあり方を探求し、価値観の変化に対応した都市計画を実現していきたいと思います。

最後に、都市計画に携わる人々の変化への対応です。今や研究者も行政の職員も民間企業の担当者も地域の生活者も、本来の業務に取り組みながら同時にまちづくりプレイヤーとして活躍する時代です。産、官、学といった組織としての属性ではなく、個々人の考え方や実践に基づいて、まさにアーバニストとしてそれぞれの形で都市計画、まちづくりに取り組む方々が増えており、そういう方々を応援する学会でありたいと思います。様々な分野、世代、属性の方々が参加しやすくなるような取り組みを進め、学会のすそ野を広げて新たな展開につなげていきたいと考えています。

都市計画は実践の学問だと思います。学問として究めていくことは当然必要ですが、社会とのつながりが極めて重要であり、産官民の実践と決して乖離してはいけないと考えます。都市計画は社会から離れては生きていけないとさえ言えるのではないでしょうか。
様々な社会の変化をしっかりとらえ、最新の動きを学問に取り込み、また学問から実践につなげていく、そういう学会にすべく、微力ながら、精一杯努力してまいる所存です。ぜひ、幅広い方々から多様なアイデアやご意見をいただければと思います。
会員の皆様に、本学会運営へのより一層のご指導、ご協力のお願いをいたしまして、着任のご挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

(2024年6月14日公開)