学会案内

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会長就任あいさつ

森本 章倫 Akinori Morimotomorimoto.jpg
早稲田大学理工学術院 教授

このたび、理事会の推挙をいただき日本都市計画学会の第38代会長に就任しました。1951年に創設されました本会は今年で71年目を迎え、伝統と歴史ある学会の舵取り役を担うことに誇りと重責を感じております。甚だ微力ではありますが、皆様のご協力をいただき責務を全うする所存です。どうぞよろしくお願いします。

さて、学会創設に尽力された石川栄耀先生は、学会の石川賞としても知られておりますが、早稲田大学の都市計画研究室を創設された初代教授でもあります。石川先生の教えは後任の松井達夫先生(第9 代会長)、3代目の大塚全一先生、4代目として浅野光行先生(第27代会長)と中川義英先生へと受け継がれ、私は第5世代目となります。石川先生の流れを組む一人として、大きな責任と世代を超えた人のネットワークに畏敬の念を感じております。

今後の学会運営については、出口敦前会長がご提示された5つの方針(社会課題対応、国際化、実務と学術の連携、地域連携と普及啓発、学会オンライン化)を受け継ぎつつ、ポストコロナにおける「人」の交流強化を図るため、以下の2点を重点的に実施したいと考えております。

1)多様な人々のリアルな交流(フィジカル空間)の促進:学会会議室等を活用して、会員相互の対面での積極的な交流を図る。

2)多様なメディアを活用した交流(サイバー空間)の促進:若手会員が主導したDX推進などの企画をとおして幅広い会員の連携を進める。

本会の永続的な課題として会員の高齢化と若手会員の減少が挙げられます。会員の世代間交流には諸先輩方にもご尽力をいただき、知識や技術の伝承だけでなく、理念や思いを受け継ぐ場を提供したいと考えております。

長引くコロナ(COVID-19)の影響は私たちの生活に大きな影響を与え、住まい方にも変化を生じさせています。
一方で、地球温暖化は着実に進み、脱炭素に向けた取り組みは待ったなしの状況で、激甚化する自然災害への対応も急務といえます。また、人工知能AIや自動運転などの新技術の実用化は、私たちの日常生活を大きく変化させる可能性を秘めています。都市を取り巻く環境が大きく変化する中、都市計画に対する期待や要望は今後さらに高まると予想されます。このような新しい課題に対応するためには都市計画学にも、これまで構築された学問領域に加えて、新たな分野との積極的な連携が必要となります。本会がその役割を担うためには、会員各位が都市計画とは何かを考え、積極的に他分野を巻き込んだ行動が必要だと感じております。

私は都市計画の基本は、3つの間をつなぐことにあると考えております。最初の間は場と場の間(空間)のあり方を考える空間デザイナーとしての役割です。公的空間と民間空間、あるいは対象空間の内と外、近年ではフィジカル空間とサイバー空間の融合など、様々な空間の適正なバランスを考えることが重要です。2つ目の間は都市の持続性に代表されるように時と時の間(時間)を繋ぐ役割を担うことです。市場経済において極めて短期の便益に焦点が当たる中で、都市計画では10年先や20年先といった中長期の未来を予見し、時間軸での調整が求められます。最後の間は老若男女など多様(ダイバーシティ)な人と人の間(人間)の幸せ(Well-being)を考えることです。石川栄耀先生は「社会に対する愛情─これを都市計画という─」という言葉を残されました。私自身、計画者として都市にどのように向き合うかの原点に立ち戻りつつ、新たな課題について考えてみたいと思います。

都市計画はバトンリレーに似ていると感じることがあります。過去から渡された都市計画のバトンを、より良い状況へと誘導し、未来に渡すことがその役割です。会員の皆様、都市計画に係る多くの方々と一緒に、より良い都市の形成に向けて、本会の活動に取り組む所存です。

最後に、引き続き皆様のご協力とご支援をお願いいたしまして、私の就任の挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。

(2022年8月25日公開)