防災特別委員会

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中間提言

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日本都市計画学会・土木学会 地域基盤再構築連携委員会 中間提言
「しなやかで力強い国土の形成と速やかな復興に向けて」

2012年7月3日

しなやかで力強い国土を形成するためには、災害経験を共有する教育を行うほか、事前に復興計画づくりに取り組むなど、日頃から防災に対する意識を高めることが必要である。
また、地域基盤施設のアセットマネジメント、多重ネットワークと広域的な相互支援体制の確保、都市計画のデータプラットホーム(都市計画GIS)の構築もあらかじめ実現しておかなければならない。
我々はこうした施策を前提としつつ、東日本大震災からの復興の現状を踏まえて、さらに以下のような施策を早急に実現することを提言する。

しなやかで力強い国土の形成に向けて

  • 非常時に向けて常に準備を怠らないこと

不測の災害発生に対して、緊急に対応可能な復旧・復興準備調査費を予備費として毎年度予算計上するべきである。 また、都市計画コンサルタント協会やUR都市再生機構など関連学業団体と先行調査隊派遣等の協定を結び、被災時に迅速な調査実施を可能にする体制をあらかじめ準備すべきである。

  • 広域災害に対する国の復興支援体制を確立すること

複数の都道府県が同時被災するような広域的な災害に対しては、国が自ら率先して、被災状況調査や市町村の復興計画の前提となる広域的な観点からの復興計画調査を実施すべきである。
そのためにも、国は復興調査・復興計画立案支援や復興事業の実施主体としてUR都市再生機構を積極的に活用する仕組みを構築すべきである。

  • 大規模災害からの復興に関する基本的な制度体系を確立すること

災害対策基本法・災害救助法と同様に大規模災害からの復興についても基本的な考え方を示す制度体系をあらかじめ確立すべきである。具体的には、省庁によって異なっている対応を復興関連施策として集約し、復興手続きの簡素化及び総合的な事業の速やかな運用を実現する基礎を整えるべきである。

  • 東日本の復興の知見を活かして、全国の防災地域づくりを推進すること

今後も津波をともなう東海・東南海・南海地震などが危惧されている。東日本大震災からの復興で目指している地域づくりには、各地で被災前になすべき「防災地域づくり」に活かすことができる様々な知見がある。同じ轍を繰り返さない防災の取り組みこそ、しなやかで粘り強い国土の形成の基礎である。

速やかな復興に向けて

  • 広域的な復興計画の調整を行うこと

これまで市町村単位での計画立案が中心であったため、現時点では広域的な調整の体制、仕組みが十分機能しているとはいえない。人口減少下、コンパクトなまちづくりを実現するためにも、誘致すべき機能や広域インフラの取り扱いなど、より積極的に県間及び市町村間の広域調整を図る仕組みを早期に実現することが必要である。

  • 産業復興との連携措置をより一層充実させること

今回の被災地においては生業及び被災者の雇用の場である産業の早期復活が非常に重要な課題となっている。津波被災地における産業復興と連携した基盤整備を実現するために、民間主体と一体となった復興事業をより一層優先する取組みが必要である。
また、復興計画と一体となった民間投資の優遇措置を拡充するとともに、複合的な効果をもたらす公共施設整備の事業評価システムについても災害復興に対応させた再検討が必要である。

  • 市町村間の広域的な復興情報交流を実現すること

各地で工夫されている復興プロセス・合意形成などの事例を共有するとともに、高台開発と低地の嵩上げなど市町村を越えた広域的な土量バランスの確保や瓦礫の広域的活用を図るために、国が中心となって県を超えた各地の復興情報・事業情報を交流させる広域情報ステイション機能を強化すべきである。

  • 復興事業推進のための人的資源を確保すること

復興計画の実現のためには、大量の発注作業・事業実施が必須であることから、引き続き全国各地から技術者派遣などの支援を行うことが必要である。
その際には行政OB技術者の活用も検討すべきで、国は積極的にその調整を図るべきである。

  • 速やかに復興事業を実施するための制度を充実させること

現行制度では復興予算を組むのに時間と手間がかかりすぎる。緊急時こそ手続きの簡素化を図るべきで、今後、現場における変更などが多数生じることも考慮すれば、事後清算で処理できる運営システムを検討すべきである。
また、復興計画推進に向けて迅速な意思決定ができる仕組みを強化すべきである。

  • 復興支援調査をより一層有効に活用し、そのフォローアップを実現すること

国が実施した復興支援調査については貴重な知見が多数含まれている。今後、積極的にデータを公開し、情報の共有と一層の活用を図るべきである。また、これからも各地の復興プロセスに関する情報を収集・整理して広く共有するとともに、フォローアップの調査についても実施すべきである。

なお、上記のような取組に加えて、原発事故の影響を強く受けている地域の復興については、未だに道筋がよく見えない多くの課題が残されている。引き続き粘り強く除染を進めるとともに、短期・中期・長期にわたる様々な複合的な取り組みを強化する仕組みを用意することが必要である。

以上